「2010年度 第5回 憲法九条を守る呉の集い」

 呉九条の会で前岩国市長講演 要旨

    「民意を生かす政治を目指して」

                斎藤 久仁子

 呉九条の会も回を重ねて去る十月三十日、「守ろう九条第五回音楽と講演の集い」が開かれた。
呉退教の皆さんにも、券の購入やカンパ、準備から当日の作業、その後の始末までいろいろお世話になりました。
 折から沖縄の米軍基地をめぐって沖縄の民意が問われる沖縄県知事選挙前とあって、
沖縄の人との連帯の思いを込めて第一部の音楽は「呉沖縄エイサーまつり」で幕開け。
「呉三線(さんしん)クラブ」の皆さんの三線の伴奏で沖縄の歌を三曲、続いて「琉呉太鼓」の皆さんのエイサー。
エイサーとは太鼓を特って踊る沖縄の勇壮な踊りで、その派手な動きに目を見張り、
三線の歌もエイサーも初めてという人もかなりあって喜ばれた。
 第二部は「岩国に吹いた風」と題する前岩国市長、井原勝介氏の講演。
 井原氏は東大法学部を出て労働省に入省、外交官や大臣秘書など、そのまま行けば超エリートコースを歩むはずだったのだが、
ここが他の人と違うところ、つまり中央政治から離れて故郷へ帰られたのである。
政府内にいる間、氏は国家財政が一般会計だけは大蔵省のチェックを受けるが、特別会計はどこのチェックもなしに、
それぞれの役所が自由に予算を使うのを見てきた。
それらは民意から程遠い使われ方をしている。氏は、地方から民意を生かした政治を発信しようと岩国へ帰って市長になられた。
 岩国は戦時中海軍航空基地ができ、それが戦後米軍の海兵隊基地になった。
これは戦前海軍鎮守府が置かれ、戦後自衛隊と米軍基地になっている呉の歴史と似ている。
 市長に就いた井原氏は防衛省の騙しと密約を発覚させる。大きなものの二つは、

@安全安心をうたって二千四百億円かけた滑走路の沖合珍説を、沖合を理由に米軍艦載機を今の六十機から二倍の百二手機にする。

A沖合務設への土砂の提供と良好な住宅団地の造成を目的とうたった愛岩山(市街地のど真ん中)に広大な米軍住宅・基地を出現。
である。

 井原氏は住民投票を実施した。岩国市民は米軍再編成反対九十%という明確な意思を表明した。密約がばれた防衛省は
 「水面下でもいいから愛宕山へ米軍住宅建設を了承してほしい。さもなくば民間空港はストップするぞ」
 「了承しなければ市庁舎補助金をカットするぞ」と露骨なアメとムチの脅しをかけてきた。
金欲しさの地元議員らはこれを了承し、井原氏と対決した。しかし、事業主体が防衛省とあっては、地元の業者に金は落ちない。
それなのに、町村合併した「新」岩国市民は、金欲しさに防衛省案了承旅の新市長をわずかの差で選んだ。
常に話し合う姿勢を取っていた防衛省は今、同じテープルに着かなくなっている。
 野に降りた井原氏は「草の根ネットワーク岩国四千人の代表として民意を生かす活動を始めている。

自民党から政権交代後の民主党も、何の説明もしないままに防衛省予算に関連経費を計上している。
お金で動く人はいても、米軍再編の影響を受ける住民は絶対に諦めず、対立は深まり、問題の解決はない。
 この五月には「見直せ!米軍再編5・23岩国大集会」に四千人余り参加。
 八月から毎月三回「1」の付く目に「愛宕山開発跡地見守りの集い」が始まる。
 どうすれば問題が解決できるかについて、井原氏は言う。
何も知らせないままこれ以上基地負担を国民に求めることは限界にきている。
公開して国民全体で一緒に考える、民意を大切にするという原点に返るべきだと。
日本に米軍がいる必要がないという安心感を与える政治にして、安全保障全体を国民的議論のもとに考えるべきだと。
 今後私達が考える方向を示してくださった印象深い講演だった。

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