「日本社会の現状」

 7・8広島マスコミ九条の会1周年記念シンポ(基調スピーチ要旨)

    「日本社会の現状」をどう見る

                浅井基文 広島市立大学・広島平和研究所長

戦後最大の危機

 日本社会は戦後最大の危機を迎えており、国民の一大覚醒が早急に実現しなければ
対外的に歴史の過ちを再び繰り返す危険性が大きく、
小泉「改革」で人権、民生主義も最大の危機に直面していると私は判断しています。 原因は
 @ 米国との政治・経済・軍事一体化を推進した小泉政権の政策
 A それを持ち且げ続けた日本のメディア
 B それに躍らされた国民の政治判断力の乏しさ、だと考えます。

 メティア、国民の責任

 明治憲法時代の国民は天皇の臣民で、国の誤りに責任を負う立場にはありませんでしたが、
今は主権住民ですから、日本が道を誤る時はその責任を負わなければならない。
 国民に必要な判断材料を提供するメディアの責任は非常に大きく、私は、主権者としての責任感を未だ我がものにしていない国民にも強い苛立ちを感じています。

 軍事同盟の変質強化

 9・11事件以後、米国が強行したれアフガン、イラク戦争は、日本の違憲の海外派兵を現実化し、
米国が本気で九条改憲を迫ることになりました。
「ならずもの国家」「不安定の弧」に対する世界規模の先制攻撃戦争を展開するため○三年に始動した米軍再編は、
日本の全面協力、日米車事同盟の変質強化が不可欠です。
クリントン時代からのもので、ブッシユ・小泉になった01年以来、急速に具体化されています。
 安保条約に基づく日米同盟から、その法的枠組みを乗り越えた同盟への変質強化を図る、
  @ 日本防衛型から対外侵略型へ
  A 米単独型から日米一体型へ
  B 限定基地型から全土基地型へ
  C国際法留意型から無視型ヘ、が特徴だと思います。

 小泉政権が民主主義に忠実なら安保を改定し、国会承認を求めるべきですが、
対外侵略型の日米軍事同盟の根拠を作ろうとするいかなる条約も、違憲で成立するはずがありません。
だから小泉政権はいわゆる有事立法等で米国の対日要求を満足させる、周辺事態法から「2ブフス2」の「政策文書」までの積み重ねとそれを実施するための国内措置などがそれです。
 しかし、平和憲法下で有事法制を「でっちあげ」には根本的な処理が必要です。
九条だけでなく、国民の基本的人権を国家に従属させ、自治体を国家の執行機関にするための全面改憲が必要です。
自民党新憲法草案は、その方向を明確にしています。
例えば、いまの有事法制ては国民を戦争に強制動員てきない、権利を制限するときも「必要最小限」の縛りをかけざるを得ません。

 国民の国家への従属

 自民党新憲法草案は九条改憲とともに、基本的人権を「国家の安全」に従属させることも狙っています。
既に開始されている基本的人権の収奪は、彼らの思惑通りにいけば、もっと激しく行われることになるでしょう。
教育基本法「改正」には、新自由主義の市場原理を教育の場に待ち込むと同時に、
国家に従順な国民を再び大量に作り出す狙いがあり
「戦争をする国」に向けた教育分野の一大攻勢です。

 アジア外交の軽視と靖国

関連して、アジア外交の軽視を続けているのは、
在日米軍再編計画が、世界規模と同時に、朝鮮半島や台湾海峡を睨んだもので、
日本軍国主義の過去を反省する歴史認識とは相いれないからです。
しかし、そうした認識を鼻であしらう小泉首相には、靖国参拝は「とやかく言われることではない」し、
軍事優先による「アジア外交の重視」が欠落するのは必然です。

 (あさい もとふみ、 1941年生、 外務省中国課長、 東大教授)


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