米軍側資料V
米海軍訪日技術使節団 「日本の諜報目標」についての報告
(U,S,NAVAL TECHNICAL MISSION TO JAPAN O-39-1, O-45(N))
所蔵:アジア歴史資料センター
亀が首海軍試射場における爆弾射撃実験
神垣惟秀 訳
米海軍訪日技術使節団
米国海軍郵便局気付
サンフランシスコ、カリフォルニア州
1946年2月
部外秘
報告者:米海軍訪日技術使節団長
報告先:海軍作戦部長
主題 :「日本の諜報目標」についての報告
ー 日本軍の大砲に関する調査、調査その1
ー 亀が首海軍試射場における爆弾射撃
参照 :(a)「日本の諜報の対象」(DNI),1945年9月4日
1. 参照文献(a)の第1分冊(O-1)中、対象O-39に関する主題報告をここに添付する。
2. 対象の調査ならびに報告は米国海軍予備軍、J.R.レイマン少佐によるものである。
米国海軍予備軍 R.R.ボッギス中尉が通訳として援助をした。
C.G. グライムズ
米国海軍大佐
部外秘 O-39-1
日本軍の大砲に関する調査 ー 調査その1
亀ヶ首海軍試射場における爆弾射撃実験
「日本の諜報の対象」(DNI),1945年9月4日
分冊 O-1, 対象 O-39
1946年2月
米海軍訪日技術使節団
部外秘 O-39-1
概要
対象:大砲
日本軍の大砲に関する調査、調査その1
亀ヶ首試射場における爆弾射撃実験
日本海軍は航空機からの投下爆弾ならびに部品の衝撃試験を行うための技術を開発した。
通常の爆弾本体を使用して行うが、特製の滑腔砲にあわせたアダプター、安定装置ならびにガスシールを用意した。
NTJ・L・O-39-1
1
O-39-1 部外秘
目次
概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.1
参照 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.3
イラスト一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.4
はしがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.5
報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.7
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部外秘 O-39-1
参照
A. 対象の場所:
広島県倉橋島亀ヶ首日本海軍試射場
B. 尋問日本人名:
カタオカ ハラオ、技手、呉海軍工廠砲煩部(大砲の建造を監督した)
カネロ ミツオ、技師、呉海軍工廠砲煩実験部(試験を実施した)
C. ATISを経由してワシントン文書センターへ転送された日本語文書:
米海軍訪日技術使節団 No. ATIS No. 表題
ND50-3472 4302 大砲からの爆弾試射記録(MSノート)
ND50-3473 4303 爆弾の防禦甲板貫通曲線
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O-39-1 部外秘
イラスト一覧
第1図.55cm (21".7)砲身を乗せた試射場大型砲架 ・・・・・・・・・・・p.7
第2図.33cm (13")砲用に改良した直径30cm~25cm (12"~10")先細型爆弾・・・p.9
第3図.33cm (13")砲用に改良した直径30cm(12")爆弾 ・・・ ・・・・・・・p.9
第4図.42.5cm (16".7)砲用に改良した直径40cm~28cm (15-3/4"~11")先細型爆弾・・・・・p.10
第5図.55cm (21".7)砲用に改良した直径50cm(20")爆弾 ・・・・・・・・・p.10
第6図.55cm (21".7)砲用に改良した直径46cm(18")爆弾 ・・・・・・・・・p.11
第7図.55cm滑腔砲から発射すべく改良した直径55cm (21".7)爆弾・・・・・・・p.11
第8図.直径55cm (21".7)爆弾底部。4個の信管用の穴を示す ・・・・・・・・p.12
第9図.55cm (21".7)砲用に改良した直径48cm~35cm (19"~13")先細型爆弾・・・p.12
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部外秘 O-39-1
はじめに
戦争末期、日本海軍は大型航空機爆弾の防禦甲板貫通能力、信管機能並びに衝撃感度について正確な情報を得る必要に迫られた。
鹿島には各種タイプの標的を備えた精巧な爆弾試射場があったが、爆弾投下にはつきものの誤差のために不満足な結果しか得られなかった。
このために呉近郊の亀ヶ首試射場では空爆の諸条件を再現し、同時に発砲の精度を利用するという技術が開発された。
1945年12月に当試射場を訪問し、主要関係者に尋問をした。
本報告は実験結果の詳細よりも、実験の方法に重点を置いたものである。
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部外秘 O-39-1
報告
1.使用したる大砲と射撃特性
本実験用に3基の滑腔砲が特別に造られた。通常の施条艦砲の施条及びライナーの一部を機械加工したものである。
33cm(13")砲は12インチ ヴィッカー バレルからが造られ、42.5cm(16".7)砲は36cm(14")砲を大型化したものである。
55cm(21".7)砲はもとは戦艦長門の口径40cm/45 (16".1)砲であった。
砲尾機構は各砲ともに変更を加えずに使用された。
大砲は全て試射場の大型砲架に適合した。各砲とも砲身から金属を除去した結果、砲尾重(breech-heavy)となったが、この状態は可動おもりを使用して矯正がされた。
おもりは、図1.に示したように、適切なバランスをとるべく砲身上の適切な位置にクランプ固定がされた。
第1図.
55cm(21".7)砲を乗せた試射場大型砲架
(砲口近くの釣り合いおもりに注目されたい)
変更後、大砲は5?7kg/sq.mm (3.2~4.5トン/平方インチ)という最大砲腔圧で発射された。
すべての実験は340m/sec(1035フィート/秒)という驚くべき速度と20°の傾斜度とで実施された。これは4000メートル(12,200フィート)の投下高度に該当することになる。
これらの条件に適合させるべく55cm砲で使用した火薬は直径14"/45 或いは、発射爆弾の重量によっては、8"/50であった。
42.5cm砲は直径8"/50或いは5"/40の火薬、33cm砲は条件に応じて直径5"/40或いは4".7/45(12cm)が使用された。
2.爆弾
第2〜8図は本実験用に変更された爆弾を示すものである。明らかに55cm砲用に設計されたものと思われる最大の爆弾を除いて、他の爆弾にはすべてシートスチール製円筒型穿孔アダプターが爆弾本体縦方向に溶接してあった。
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O-39-1 部外秘
使用されたスチールの厚さは55cm, 42.5cm爆弾用が1/4", 33cm爆弾用が3/16"であった。
アダプターの成形は正確で、発射体ブーレ(bourrelet)と大砲直径間は標準許容誤差内にあった。
銅バンドがアダプターの後部端に取り付けてあった。施条砲用発射体の回転バンドに似ているが,
幅はより狭かった。銅バンドはガスシールの役割をするとともに爆弾の大砲内での位置を決定する。
アダプターに付ける銅バンドの位置は重大ではないが,普通は出来るだけ尾部に近く付けることとされていた。爆弾を出来るだけ砲内深くに装着して爆弾尾部後方に火薬装填用の空間を残すためである。
当アダプターは標的板に当った瞬間きれいに吹き飛んだ。
また前方溶接部は弾頭から十分の距離があり、そのため爆弾の貫通特性には影響を与えなかったと考えられる。
第7図に示す直径55cm爆弾はアダプターなしで大砲に適合したが、発砲のために、爆弾本体に細い銅製のガスチェックバンドを装着するという改良が加えられた。
これは他のより小型な爆弾のアダプターに付けた銅バンドに似たものである。
発砲実験のために爆弾に装着した尾部はアダプターと同じ規格のシートスチール製で、長さは直径の2倍であった。
それらは日本軍の航空機爆弾の通常の尾部に似ていた。
尾翼を円錐体に固定したものである。円錐体は爆弾の底部にボルトを環状に打って結合されていた。
しかしながら,通常の爆弾尾部とは異なり,尾翼が爆弾の最大直径以上に飛び出さないようにした。
尾翼総体の幅がブーレの直径と同じでなければならないからである。
また、飛行を適切に安定させるためには尾翼は8本必要であることが判明した。
爆弾に4本しか尾翼をつけないで行った初期の実験では、砲口から120m (400ft.)の偏揺れカードで
偏揺れは平均10°であったが、空中飛翔の距離を延ばすと爆弾は安定する傾向を示した。
8本の尾翼を使用したところ,120mでの偏揺れは無視してよい程度に減少した。
アダプターと同じように、尾部の尾翼並びに円錐体は写真に示すように火薬ガスからの損傷を排除するために穿孔が施されていた。
3.結果
次の表は無炸薬(inert-loaded)から実用重量(service-weight)に及ぶ各種爆弾の対装甲鋼板の性能報告である。
傾斜角20°、衝突速度は340m/s (1035 f.s.)であった。
大砲 爆弾 貫通装甲厚
33cm砲 250kg HE (550-lb) 65mm (2".55)
(13") 500kg AP (1100-lb) 150mm (5".9)
42.5cm砲 500kg HE (1100-lb) 70mm (2".75)
500kg SAP (1100-lb) 80mm (3".1)
(16".7) 800kg AP (1760-lb) 175mm (6".9)
55cm砲 800kg HE (1760-lb) 入手できず
(21",7) 1500kg AP (3300-lb) 200mm (7".9)
炸薬填爆弾(live-loaded bombs)の対装甲鋼板実験も行われた。
800kg AP爆弾のトリニトルアニソールが上述した実験条件の鋼板で衝撃を受けて爆発をすることが判明した。
圧縮おがくずの腔内ライナーとアルミニウム製ノーズキャップを使用して満足すべき減感剤が開発されたこと述べられている。
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部外秘 O-39-1
また、衝撃時の信管機能を実験するために活信管(live fuzes)を装填した無炸薬爆弾が装甲鋼板に発射された。
砲口から鋼板までの距離は400ft.あり、このために信管は通常通り作動状態に入ることができた。
亀ヶ首で見た使用済み爆弾のうちのいくつかは酸素トーチで半分に切断され,信管の検査ができるようにと先端部分から充填剤が除去されていた。
4.処分
本報告で記述した3つの大砲は軍国主義の排除プログラムの一環として全て破壊された。また亀ケ首で発見をされた改良爆弾は同じく破壊あるいは海中投棄がなされた。
第2図.
33cm (13")砲用に改良した直径30cm~25cm (12"~10")先細型爆弾
第3図.
33cm (13")砲用に改良した直径30cm(12")爆弾
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O-39-1 部外秘
第4図.
42.5cm (16".7)砲用に改良した直径40cm〜28cm (15-3/4"~11")先細型爆弾
第5図.
55cm(21".7)砲用に改良した直径50cm(20")爆弾
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部外秘 O-39-1
第6図.
55cm (21".7)砲用に改良した直径46cm(18")爆弾
第7図.
55cm滑腔砲から発射すべく改良した直径55cm (21".7)爆弾
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O-39-1 部外秘
第8図.
直径55cm (21".7)爆弾底部。4個の信管用の穴を示す
第9図.
55cm (21".7)砲用に改良した直径48cm~35cm (19"~13")先細型爆弾
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