「大和ミュージアム」 課題・見学記

2、「大和ミュージアム」見学記T

   B、伊藤英敏「呉市海事歴史科学館」見学  2008年2月〜9月記

   A、朝倉邦夫「大和ミュージアム」見学記  2005.9.12.記

位置図    大和ミュージアムは軍事博物館としての表情が強い。
 館のテーマは、「技術と平和」だが、戦艦大和に象徴させて技術(軍艦・武器)の発展を大きく展示し、その負の遺産である戦争被害や自由の抑圧、国民生活の困窮状況などの問題点を解説展示しないので、必然的に軍事色が強まり「平和」は霞んでいる。
 また、それが憲法改正を煽る時代の雰囲気に合致し、入場者数の状況を日本一にしている。

 館が「技術と平和」をテーマにするなら、展示内容と展示方法にもっと工夫と改善が必要ではなかろうか。
 「平和」を言うなら、戦争反対の取り組み(反戦水兵)や民衆の生活向上の取り組み(工廠のストライキ・米騒動)、軍国主義・皇国史観での学校教育、自由や思想の抑圧、戦争の悲惨さや戦争被害の実情などを分かり易く展示せねばならない。

 例えば、館の入り口に海神に武器を持って立たせ、大砲の砲身を横たえるのは、いかにも戦争を賛美する姿勢である。今は何故か表示されていないが、シンボルマークは大和の主砲3連装で表現している。また、広場の柵は砲弾で囲っている。

正面風景  ポセイドン像  戦艦陸奥の砲身  砲身
シンボルマーク 開館案内 区切り柵

 主会場の「大和ひろば」や大型資料展示室には、戦艦大和の1/10模型をメインに、ゼロ戦や人間魚雷、大砲や砲弾などを展示し、規格や性能を解説している。
戦艦大和の模型・正面  戦艦大和の右後方  戦艦大和の左後方

ゼロ戦見学風景  ゼロ戦  ゼロ戦  特殊潜航艇「海竜」

館から見える港の眺望・左旧鎮守府・現総監部・右旧工廠造船部・現IHI

 「平和」を強調する博物館であれば、これに関わった戦争被害も大きく取り上げて、批判しながら同時に展示すべきだが、そのような資料や解説は展示されていない。

 「呉の歴史」展示室は、呉鎮守府と呉海軍工廠の開設と発展を軸に、軍需産業の技術と成果を紹介し、戦艦大和の建造と戦跡やその生涯を詳しく解説している。それを支えた呉市民の生活や呉空襲についても簡単に少し解説している。
呉空襲関係の展示  戦時体制下の社会  学徒動員  学童疎開

空襲警報発令状況  空襲警報の伝達  3月19日呉軍港空襲

5月5日広工廠空襲  7月1日呉市街地空襲  7月24日呉沖海空戦

 解説ビデオや展示物の解説はおおむね簡潔で、客観性を持たせているが、軍国主義・侵略戦争の反省は少なく、技術を中心に海軍や戦争を肯定・美化する傾向が強い。

 戦後の呉市の歴史展示では、占領軍の進駐と旧軍港市転換法の制定で、旧海軍工廠の施設と技術を利用していかに発展したかを展示している。
 だが、その後の呉市が産業の高度化や産業構造の転換について行けず、市勢が衰退してきている現状の原因にもなっている点を展示できていない。
 海上自衛隊の創設と発展が、旧海軍を伝承し、呉市に与えた事象についての展示がない。
海上自衛隊と「共存共栄」を謳い、港湾利用を阻害して産業発展を行き詰らせ、平和産業の遅れを招き、呉市勢の衰退を招いて、自衛隊依存を強めているのが現状である。
 今後つくられる海上自衛隊の(潜水艦・掃海艇関係等)軍事博物館と江田島の術科学校参考館、それに大和ミュージアムを結ぶ三位一体の観光産業に生きる道を見出そうとする道は戦争肯定への道でもあり、呉市が軍事都市化へ進み、かつての戦災都市へつながる道でもあることへの反省が少ない。

 会場は暗くて、展示解説の字が小さいので読みづらく、ぎっしり詰まっているので鑑賞しづらい。展示内容と展示方法に一段の工夫改善が必要であろう。

 展示室「船を作る技術」や「未来へ」は「海事歴史科学館」の本来の目的である「技術と平和」を青少年向けに展示している。
 「海事歴史科」の「歴史」部分が、「船の歴史」を人類の文明発展の全体像の中で展示してなく、「技術」の現状を自然科学的に解説するに止まり、「なぜ、何のために、どのように」「未来」につながっているのかの「人文科学」的な解説展示にかけている。
 まさに、呉市海事歴史科学館 館長 戸高一成さんが「大和の最後」の課題とした日本近代化の問題点、「自然科学」のハード技術偏重で、「人文科学」のソフト、合理精神や歴史認識の欠如が、奇しくも「呉版和魂洋才」大和ミュージアムとなって表現されている。

 戦前、「教育勅語」があり、学校で覚えさせられたが、その内容の大部分は当たり前の市民道徳や国民的教養を述べていた。
 しかし全体を貫く思想は、儒教道徳と皇国史観に基づく「天皇のため」「お国のため」に尽くすことの出来る人材育成の為のもので、個人の人格尊重や幸福の為のものではなかった。
 ちょうど「大和ミュージアム」も展示の個々の内容は、それなりに大切で優れた展示が多いが、
全体に流れる展示の方向の印象は、「技術と平和」を言いながら、「技術と戦争」を賛美するか是認する方向の内容になっている。
 「戦争」と「平和」、呉市や産業発展の「光」と「影」のうち、「戦争」「光」が展示の主流を占め、「平和」「影」の展示が少ないのでバランスを欠き、開館のテーマや意義を低めている。
 今後の展示換えのなかで、「平和」への展示内容を増やし、子供にも安心して見せられる本当の「海事歴史科学館」にして欲しいと思った。

 最上階の「市民ギャラリー」や「テラス」の利用が十分でないように思える。市民の憩いの場として、もっと利用できる場作りを目指して欲しい。
 出来れば、当館の不十分な部分、「平和」「戦災」などを集中的に展示解説する場にし、バランスある展示で呉市民や近郊の市民が安心して子供をつれてこれるミュージアムにして欲しいと思った。


B、伊藤英敏「呉市海事歴史科学館」見学  2008年2月〜9月記



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